(1)発光輝度の強いBTP誘導体の作成 BTP発光の組織深達度を増すため、22年度に最大発光波長を近赤外領域の710nmにしたBTPHSAを作成した。内視鏡観察ではフルオレスチンやICGのように発光輝度の強いプローブが必要なので、23年度はBTPの組織集積性を高める工夫をした。BTPのDimethyl基を導入したBTP-DMを作成した。DMは細胞内ではその還元環境でプラスに荷電するので、BTP-DMは細胞膜を通過できず、細胞内に留まるようになる。事実、BTP-DMはBTPに比べて約10倍の発光輝度を得た。 リン光/蛍光発光比率を利用した低酸素測定プローブの開発 BTPのリン光は常酸素圧では酸素消光を受けるので発光が消えてしまうが、低酸素状態になると発光が見えるようになる。一方、蛍光は酸素濃度に関係なく発光する。そこで4つのプロリン鎖でBTPと緑色蛍光を出すクマリンの複合体を合成した。この複合体を培養細胞HeLaに取り込ませ、405nmで励起すると常酸素状態では緑色に発光し、培養チャンバーの酸素濃度を下げてゆくと紫がかった赤色を呈するようになる(発表論文)。 内視鏡実験 21年度の研究開始時にオリンパスからマウス・ラット用の特別仕様内視鏡を借用した。その時は、大腸を一部結紮して低酸素にしたヌードマウスの尾静脈からBTPを静注して大腸を内視鏡観察したが、BTP発光を観察できず、この内視競をオリンパスに返却した。今回、発光強度を増したBTP-DMで同じ実験を行なうべくオリンパスに内視鏡借用を願いでているが、他の大学からも使用希望があり、ウエイティングリストから我々の使用は今夏頃になるとのこと。従って、本研究の終了までにBTP発光の内視鏡観察を確認できなかった。
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