研究概要 |
微小気泡を用いた低侵襲治療法として、超音波照射による温熱効果及び非温熱効果を利用した手法が開発検討されているが、微小気泡は生体内では血流と共に拡散するため、これまでは血流に任せる以外に送達手段が無く、投入効率と副作用の問題があった。本研究では、微小気泡の動態を制御するために複数の超音波音源と単純な形状の分岐を有する模擬血管を用いて、微小気泡の流路選択性能を向上させる方法について検討した。超音波が微小気泡に及ぼす作用力には、伝搬方向への推進力となるprimary Bjerknes forceと気泡同士が結合した凝集体を形成する引力となるsecondary Bjerknes forceがあるが、前者では流路の分岐形状に対する音波照射角度等の、後者では凝集体のサイズとその飽和時間に必要な音波のパラメータをそれぞれ導出した。これらの両方を同一空間に発生させ,凝集体の形成後に目的の経路に誘導する実験を行った結果、凝集体を形成しない場合に比べて,凝集体を押し出した場合の誘導率が1.3 5.5倍向上することを確認した。凝集体の非形成時には中心周波数5[MHz]の音波が最も推進力が得られた一方凝集体形成時には中心周波数が2[MHz]で誘導率が最も高くなることを確認した。以上のことより、凝集体自体が一個の微小気泡であると見なした場合のサイズから導出される共振周波数に近いことが推測された。一方、上記の物理現象を生体内で発生させるため、超音波音源の制御機構として従来の電動モータを用いたロボットと空気圧を駆動源としたアクチュエータを用いた機構をそれぞれ開発し、位置及び力の制御法を開発した。各アクチュエータへの印加電圧から超音波音源の接触力の推定が可能となり、安全な制御を実現できた。
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