研究概要 |
本研究は経頭蓋磁気刺激や経頭蓋電気刺激を用いて脳神経の興奮特性を引き出し、それにより脳波の情報を読み取るリアルタイムBCI(Brain Computer interface)を目指している。まず、反復経頭蓋磁気刺激(rTMS)、経頭蓋直流電気刺激(tDCS)が神経興奮特性に与える影響を調べるため、それぞれの刺激を運動野に与えた際のミュー波の事象関連脱同期(BRD)の刺激前後の変化を調べた。その結果、rTMSの刺激強度が運動閾値の110%の場合、および1mA、10分間のtDCSの陰極刺激ではERDが減少し、tDCSの1mA、10分間の陽極刺激ではERDが増加する現象が見られた。これらのことは、rTMSやtDCSが神経の興奮特性を変化させることを示すもので有り、rTMS、あるいはtDCSをBCIとうまく組み合わせることにより効率のよいBCIの実現が可能であることを示すものである。また、リアルタイムで効率の良いBCIシステムを実現するために、脳波に混入するノイズ、特に眼球の動きによるアーチファクトのリアルタイム除去のためにICAを用いた手法を開発した。このシステムでは、約3秒間の時間遅れは生じるものの、眼球の動きによるアーチファクトをオンラインで除去することが出来た。さらに、経頭蓋磁気刺激と脳波を同時計測する際に問題となる磁気刺激によって誘導されるアーチファクトを、等価電気回路モデルにより算出したアーチファクト成分を用いて差分を取ることにより除去することが出来た。経頭蓋磁気刺激における神経の興奮メカニズムを調べるため,脳の解剖構造,神経軸索を考慮したモデルを用いて、刺激時の渦電流をシミュレーションより計算する方法を開発した。これにより、神経興奮の位置や神経興奮のための刺激条件がしょうさいに求めることが出来るようになった。
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