研究課題
動物実験の代替や人の前臨床試験の新しい手法として、本研究は、肝細胞のみではなく、内皮細胞等と構造を構築した肝組織によるマイクロ培養装置(肝組織チップ)を開発することが目的である。平成23年度では、肝組織チップの実用化への道筋を示すために多角的に肝機能等を調べた。第一に、我々が開発した初代肝細胞、内皮細胞とバイオマテリアル(EHSゲル)の3者の組み合わせにより再構築した肝組織(類洞様構造)システムにおけるアセトアミノフェン誘導肝障害におけるメタボローム解析をおこない、アセトアミフェンの代謝を確認し、さらにその際の様々な代謝物の変化を解析した。この肝組織を応用した開閉式再構築型肝組織チップの小型化と多流路設計も行ったが、用途として必要性がないとのことで中断した。第二に、ヒトips・ES細胞から誘導した肝組織については、安定的に肝組織が構築できる条件を見出した。現在、論文を執筆中である。第三に、肝臓潅流モデルにおけるアンモニアからの尿素合成をモニターし、オルニチン投与によりその尿素合成が促進されることを確認した。そこで、マウスES細胞由来肝組織において、同様に、アンモニアやオルニチンの添加による反応を解析したところ、肝臓潅流モデルの場合と同様な反応性を確認できた。このことは、尿素サイクルの一部がミトコンドリア内で反応が起きていることからも、ミトコンドリアの活性やミトコンドリアへの流入・排出のトランスポーターが働いていることを示している。また、色素などの肝細胞への取り込み・反応・局所的排出も確認できたとことから、マウスES細胞由来肝組織の肝細胞には細胞極性が構築されており、特に微小胆管への代謝物の排出が確認できたことは、今後の薬物動態試験への応用に期待できる。
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