研究課題
ウイルスに対する静電誘引力を持ち、吸着したウイルスを不活化させるため、本年度はハイドロキシアパタイトナノ結晶(40nm長径)をポリスチレンなどの高分子膜に電気泳動堆積法を用いて結合させた。原子間力顕微鏡による観察の結果、ハイドロキシアパタイトナノ結晶は単一層を形成して高分子膜に堆積・結合することを見出した。さらに、成膜したナノ結晶は超音波処理などにより遊離せず、強固に結合していた。本手法は、様々な形状を持つ高分子腺、(多孔質・繊維形態など)にも応用が可能なことから有効であると考えられる。脂肪酸としてリン酸脂質を用いてハイドロキシアパタイトとの複合吸体の作製条件の検討を行った。検討には、水晶振動子マイクロバランス法(QCM)を用いた。その結果、リン酸脂質は溶液中でマイクロスフェアーを形戌し、ナノ結晶表面において多層的に吸着することを見出した。脂肪酸との複合化は、用いる溶媒の成分が重要であることを明らかとした。今後の複合化条件の最適化が期待できる。また、細胞培養によるGFP遺伝子を導入したバキュロウイルスの感染力を調べるため、ハイドロキシアパタイトと細胞との相互作用に関してQCM法を用いてその場計測を行った。線維芽細胞を用いて行った結果、ハイドロキシアパタイトナノ結晶表面に良好に吸着・増殖することを明らかとした。ハイドロキシアパタイト表面に付着したウイルスの感染力試験方法の確立ができた。これらの結果から、近い将来、感染爆発(パンデミック)を引き起こすウイルスの感染を防ぐ高機能性ウイルス除去フィルタの基本設計を立てることができた。
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