研究概要 |
平成23年度は,以下の2項目について研究を行った。 1.個体別顎運動表示システムによる上下歯列の干渉状態を観察する手法の開発 まず,X線CT装置による画像データに基づいて作成した患者の頭蓋骨および下顎骨のメッシュモデルの歯列部分を石膏模型データを利用して,微小なボクセル要素で構成される精密な立体モデルに変換した.次に,この歯列モデルを患者の顎運動データを用いてコンピュータ上で動かし,上下歯列の干渉領域を検出する手法を開発した.その結果,0.1mmの精度で干渉領域を検出可能になった.この手法の有効性を確認するために,コンピュータ上で歯列形状を変更することで矯正治療状態を再現し,歯列部の干渉状態を定量的に評価できることを示した.本手法は,歯列移動時の歯列の干渉箇所を定量的に評価できるため,矯正治療計画の際に有用なツールとなると期待される. 2.基本運動モードによる下顎運動表現と咀嚼筋の活動状態の関係 顎運動機能を定量的に評価することを目的として,顎運動表示システムを用いて咀嚼筋群の筋肉長変化を算出することにより,咀嚼時の筋肉群の活動状態を分析する手法を開発した.筋肉群の活動状態は,筋肉長変化を用いることにより,筋収縮の程度とタイミングを直感的に理解できる表示にした.また,下顎運動を分析することにより,複雑な下顎運動でも単純な運動の合成であるという考えの基に,顎運動表現の検討を行った.その結果,種々の咀嚼運動でも3つの基本運動モードで表現可能であることを数理モデルを用いて示した.この研究により咀嚼運動時の筋肉長変化との関係が議論できるようになった,この研究成果は,咀嚼訓練やリハビリを行う際に役立つと考えている.
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