研究課題
画像診断法の発展は疾病の早期発見とその治療効果の改善にめざましい進歩をもたらしている。なかでもMRIは非侵襲・無障害であること、そして軟部組織コントラストが高く、空間分解能に優れていることから臨床医学の現場において重要な位置を占めている。MRI造影剤の利用は病変部位の明瞭な描画のために必要不可欠の手段となりつつある。既に、肝臓、脾臓、そして骨髄といった網内系に特異的な造影剤が臨床において広く使われており、組織選択性という観点では大きな成果を上げている。しかし癌など特定の疾患に対する特異性は低く、未だ開発途上と言わざるを得ない。そこで本研究では、疾患シグナルに応答する造影剤の開発を目指す。これを可能にするには、疾患シグナルがスイッチとなり、その物性を大きく変化させる材料が必要である。そこで本研究では古細菌が作るsmall heat shock protein (Mj285)に着目した。本年度はこのナノカプセル表面にヒトB型肝炎ウイルスに由来するPreS1ペプチドを遺伝子レベルで組み込むことで、ナノカプセルに肝特異性を付与することに成功した。PreS1ナノカプセルは期待通り、in vitroにおいてヒト肝細胞に対する特異性を示した。さらに健常な雄性マウスに尾静脈から投与したところ、野生型ナノカプセルが3時間で体外に排出されたのに対して、PreS1ナノカプセルは24時間後も引き続き肝臓に保持されていることが明らかとなった。摘出した肝臓から組織切片を作製したところ、PreS1ナノカプセルはクッパー細胞ではなく肝実質細胞に取り込まれていることが分かった。今後は、このPreS1ナノカプセルの内孔にMRI造影剤を固定化し、MRIによる肝予備能のボリュームデータの作成について検討する予定である。
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Biosensors and Bioelectronics
巻: 25 ページ: 1869-1874
Magnetic Resonance Imaging
巻: 28 ページ: 708-715
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