本研究の目的は、両側分離型トレッドミル(Split Belt Treadmill)を用いて、足部への荷重を変化させる、または足部に外乱を加えることで、歩行の外乱に対する、転倒回避の身体ストラテジーを神経生理学的および運動学的に解析することである。平成21年度はその基礎的実験として立位での足部への外乱に対する生体の反応を検討した。 具体的には、両側分離型トレッドミル上に静止立位を取り、予期せぬタイミングで片脚のみ、もしくは両脚同時に前または後に急速にベルトを動かす外乱を与え、表面筋電図にて筋活動を記録した。被験筋は両側の前脛骨筋、腓腹筋、大腿四頭筋、大腿二頭筋、中殿筋、腹直筋、傍脊柱筋である。 結果、片脚外乱、両脚外乱ともに遠位筋から近位筋の順で活動するパターンが見られた。ベルトを前方に引く外乱では前脛骨筋、大腿四頭筋、腹直筋の順であった。後方へ引く外乱では腓腹筋、大腿二頭筋、傍脊柱筋の順である。これは、従来報告されているいわゆるアンクルストラテジーとして矛盾しない結果であった。 一方で片脚外乱時の左右脚の同名筋を比較すると、ほとんどの筋では外乱側の方が早く活動を開始するが、後方に引いた際の大腿二頭筋では非外乱側の方が早く活動することがわかった。これは立位時の重心管理に重要な役割を果たしていると考えられた。この結果は第39回日本臨床神経生理学会学術大会において発表した。 来年度は三次元動作解析装置を使用し、重心動揺と筋活動、より強い外乱を与えた際のステップ反応について検討を行う予定である。
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