研究課題
最近我々は、頸椎の特定の部位を特異的に切断した脊髄損傷モデル動物をサル(マカクザル)で作製し、ポジトロンエミッショントモグラフィー(PET)法を用いた非侵襲的な脳機能画像解析を長期的に行い、損傷後の手の巧緻運動の機能回復には一次運動野(M1)と運動前野(PM)のダイナミックな活動が関与していることをはじめて明らかにしている。また、脊髄損傷後の損傷対応側のM1領域との活動の間の相関解析(同期的活動)を詳細に行った結果、意欲や動機付け、報酬との関連が高い側坐核の活動が、損傷後の回復過程の早期および後期にわたって認められた。このことから、中枢神経損傷後の運動機能回復には、ドーパミン神経による動機付けによる促進が関与する神経機構が存在することが示唆された。今回、側坐核の機能回復における役割について検証するために、側坐核を破壊の有無が脊髄損傷後の回復過程の経時的変化に与える影響について検討を開始した。方法は、あらかじめ小さな餌をつまんで取る運動課題を訓練したアカゲザル(macaca mulatta)の側坐核を神経毒であるイボテン酸を直接注入することで選択的に両側性に破壊し、その2週間後に、これまでと同じ要領で片側の脊髄損傷を施し、損傷後の餌つかみ取り課題の正解率および行動の詳細について検討を行う。3頭のアカゲザルについて、側坐核の両側性破壊後に脊髄損傷を施し、運動麻痺が起こっていることを確認した。現在、損傷後の運動回復を行っている。
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