研究概要 |
本研究では変形性膝関節症(膝OA)患者を対象として、初期の異常の発見に努めるとともに、治療介入による歩行時の動的な微細アライメント変化を検出し、訓練や装具の効果とその発現機序を定量的に検討することを目的にする。 わが国では現在700万人を越える有症状の変形性膝関節症患者が存在しており、その大多数を占める軽症群の治療は装具や運動療法など保存療法が行われる。膝OAへの治療・リハビリテーション体系の充実は、介護予防の観点からも急務の課題であるが、現段階では経験則による部分が大きく、一定のエビデンスのある治療は薬剤・手術を除くと大腿四頭筋強化訓練や外側楔状足底板などに限られる。これらの保存療法の作用機序は「膝の安定化に有効」などとされるが詳細は不明である。一方で、歩行解析技術は近年大きく進歩し、膝関節をはじめ、下肢の各関節に加わる荷重や関節トルクの計算ができるとともに、矢状面、前額面、水平面での3次元上の四肢セグメントの微細な動きが捉えられるようになった。これらの手法を用いて治療効果発現機序を調べるものである。 【本年度の研究成果】 本年度は ・膝関節の3次元的動作解析による変形性膝関節症に特徴的な変化パラメータの抽出 ・装具療法などの介入による変化の検出、筋活動電位、筋酸素動態計測 ・大腿四頭筋、股関節内外転筋の強化といった介入トレーニングによる前後変化の検出 を目標とした。そのうち、特に運動療法が変形性膝関節症患者の歩行時膝関節運動に及ぼす影響について検討した。膝OA患者45名を12週の運動療法を行う介入群25名および対照群20名に分け、介入前後で歩行動作解析、JKOMスコア、股関節内外転筋力、膝関節屈曲伸展筋力の計測を行った。運動療法介入後、立脚中期における膝内転角度の減少、脛骨内旋角度の増加,JKOMスコアの改善,股関節内転、外転筋力の増加がみられた。
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