研究概要 |
有症状の変形性膝関節症患者数は700万人に達するとされるが、現段階ではその保存療法の作用機序は「膝の安定化に有効」などと述べられるに留まり、詳細は不明である。一方で、歩行解析技術は近年大きく進歩し、3次元上の微細な動きが捉えられるようになった。これらの手法を用いて病態の早期変化および治療効果発現機序を探り、水平面での歩行に加え、疼痛の誘発につながる姿勢動揺の際の膝関節挙動を調べるものである。 【本年度の研究成果】 今年度は、昨年度の歩行路上での動作解析に加え、床面動揺に対する反応を調べる予定であったが、導入した6軸モーションベースに一部改修を行なう必要があり、この部分は23年度に繰り越すこととなった。個人に対応した戦略を検討することを目標に、水平歩行での微細運動と生体力学的パラメータ、疼痛との関連について、計測を実施した。計測内容には下肢筋力、関節トルク、関節可動域,更にKellgren-Lawrence分類によるX線所見、Japanese Knee Osteoarthritis Measure (JKOM)による臨床症状、VASによる疼痛を用いた。 (1)初期OAにおいて-脛骨内旋変位量の減少が見られた(Screw Home運動の時期が波状を呈する)。また膝伸展可動域の減少が影響した。 (2)中期OAにおいて-屈曲角度,屈曲変位量の減少が見られた。またVAS,膝伸展筋力と相関が見られた(逃避歩行ないし膝安定性低下?を意味するか)。 (3)後期OAにおいて-内転角度.内転変位量の増加が見られた。膝内外転不安定性を反映する可能性がある。これらの歩行時膝関節運動と下肢機能の相関を通じて、病態・予後との関連が進むと思われる。
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