研究概要 |
現在,咽頭癌患者の数は年々増加しており,手術により発声機能を失うことに伴う機能障害者も増えている.本研究はそのような機能障害者に障害前の自分自身の声を取り戻させるシステムの実現を目的としている. (1)発声障害者音声データベースの構築の継続新たに構音障害者に関するデータをデータベースに追加した.音声バランス文の読み上げ時の音声,体内伝導音についてデータベース構築を更新した.日本大学牧山医師のご協力の他,広島大学病院にもご協力頂いた.データベースの構築と同時に音声復帰のための各サブワード間(明瞭音声-体内伝導音)の伝達関数を作成も継続して行った.伝達関数を線形予測係数により表現することにより,さらに明瞭度が向上することを見いだしたので,それをシステムに導入した. (2)障害者の体内伝導音連続音節認識システム構築の継続昨年度同様にシステム検討を進め,より実用レベルの認識率を目指して検討を継続し,話者適応の効果を確認した.線形予測係数に伝達関数を改めたことにより,認識率の向上も確認できた. (3)音声明瞭度評価手法の検討音韻論的構造のもっとも基本的な単位である調音素性に注目し,合成音声が障害者原音声と比較してどの程度調音素性を再現できているかを調査した.その評価により,障害者原音声と比較して,システム出力において弁別素性の伝達率の向上を確認することができた.その結果,本支援システムを用いることで,発声障害者において弁別素性を再現できることが分かった.この調音分析手法は音声明瞭度評価手法として有効に用いることができることも確認できた.
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