研究概要 |
今年度の本研究の目的は、筋疲労とタイピング学習が視覚連合野や前頭前野にどのような影響があるかを視覚誘発電位(visual evoked potential ; VEP)と体性感覚誘発電位(sensory evoked potential ; SEP)を用いて検討した。被験者にタイピング練習と筋疲労を別々に負荷して、脳波計(ニューロスキャン32ch今年度購入)を用いてSEPを用いて前頭前野の興奮性変化で検討した。被験者にはリング刺激装置を人さし指に装着し、5秒に1回の電気刺激を計60回出し波形の加算平均を行い、長期成分を抽出しP300に注目した。また、タイピング学習および筋疲労による視覚連合野への影響は、現在VEPに対する実験条件を整備し予備実験中である。 1) タイピングによる運動学習が前頭前野に及ぼす影響 10分間のタイピング練習後の長期成分のP300がコントロール値と比べた結果、わずかに低下する傾向が見られた。タイピングに対する注意(認知)はタイピング後に測定したために顕著な変化として出現しなかったと考えられる。 2) 筋疲労が前頭前野に及ぼす影響 約50%最大握力で1秒に1回の割合で2分間のグリップ運動を被験者に行わせ筋疲労に至らせた。コントロール値と比べ筋疲労後にP300が顕著な減衰が認められた。このことは筋疲労により刺激への感受性が落ち,刺激に対する認知が低下する可能性が推察される。P300の発生には複数の脳部位が関与することから,疲労により特定部位の活動が抑制されていると考えられる。筋疲労によって感覚野からの情報と運動野の情報が相互に作用をし、感覚系の興奮性変化も運動野の可塑的変化を引き起こすと考える。筋疲労による前頭前野の興奮性変化をSEPで検討した結果、筋疲労が前頭前野を介する注意に大きく影響することが示唆された。
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