本研究は、大学における体育科教師養成に活用できる基礎的な教師行動を例示する体育授業映像及び授業の全体像を把握するための組織的観察データを組み込んだ「教授能力開発プログラム」を構築することを目的として、次の課題に取り組んだ。 (1)学生及び初任教員に求められる体育教師の教授能力スタンダードとして、昨年度に作成した次の20項目から教授行動評価規準の妥当性を検討する。(1)授業の始まり、(2)学習課題の説明、(3)学習手順の説明、(4)理解度のチェック、(5)板書・掲示物・学習資料、(6)デモンストレーション、(7)組織化(グルーピング)の実施、(8)反省(まとめ)、(9)活動場所・活動隊形、(10)移動、(11)待機、(12)施設・用具の準備、片付け、(13)話し合い、(14)学習カード・資料の活用、(15)安全管理、(16)モニタリング、(17)発問の活用、(18)肯定的な相互作用の活用、(19)技術習得の手がかり、(20)学習者の行動に対する行動。 (2)模擬授業における次のプロセスからなる「教授能力開発プログラム」を引き続き構築する。(1)単元計画・指導案を作成して模擬授業を実践する。(2)教師行動を中心に撮影された授業映像から教師行動の組織的観察記録データを作成する。(3)映像及び組織的観察データを参照しながら省察レポートを作成する。(5)授業後もネットサーバーを介して知識構造ごとに分類された映像コンテンツ(映像と組織的観察データ)を視聴する。(6)模擬授業の映像アーカイブスを毎年更新し、典型映像はデータベース化する。 (3)平成23年度の筑波大学における学部・大学院の体育模擬授業に教授能力開発プログラムを適用して受講生の教師行動を教授行動評価規準によって評価し、プログラムの効果を検討する。 その結果、体育教師の20項目の教授行動評価規準の評価から、(1)模擬授業の実施によって受講生の教授能力の向上をとらえることができる、また(2)教育実習前の学部生と実習後の大学院生の教授行動とのそれぞれの特徴をとらえられることが示された。
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