研究概要 |
【目的】運動トレーニングが,運動時における深部体温上昇に伴う換気亢進反応に及ぼす影響を検討すること(運動トレーニング時の気温の違いの影響も検討した).【方法】20名の健康な男性を被験者とし,寒冷群(n=10)と暑熱群(n=10)にランダムに分けた.両群ともに,VO2peakの測定を行い,その2~4日後に,運動時暑熱負荷テストを行った.運動時暑熱負荷テストでは,安静時の測定の後,50%VO2peak強度の自転車運動を37℃の環境下において行った.このテストの1-2日後,運動トレーニング(50%VO2peak強度での20分の自転車運動を10分の休憩を挟んで4セット行い,これを6日間連続で行った)を,寒冷群では10℃,暑熱群では37℃の環境下でそれぞれ行った.運動トレーニング終了から24時間以内に再び運動時暑熱負荷テストを行い,その1-2日以内に,VO2peakの測定を行った.【結果】安静時血漿量は,寒冷下トレーニングによって増加する傾向にあり,一方で暑熱下トレーニングにより有意に増加した(7%).VO2peakは,寒冷,暑熱群ともに,トレーニングによって有意に増加した(それぞれ5%,6%).運動時暑熱負荷テストにおいて,両群ともに運動トレーニングにより安静時の深部体温は有意に低下し,さらに同一運動時間での深部体温と換気量も有意に低下した.また,暑熱群においては,食道温の上昇速度も有意に低下した.深部体温上昇に伴う換気亢進反応の指標として,食道温に対して換気量の値をプロットし,この回帰直線の傾きを寒冷及び暑熱下運動トレーニングの前後で比較したところ,有意な差は見られなかった.【結論】運動時の深部体温上昇に伴う換気亢進反応(食道温と換気量の回帰直線の傾きで評価される)は,短期間の運動トレーニングによって変化しないことが示唆された.
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