研究概要 |
水泳の推進力に関する多くの研究では,各時刻の流れ場を定常とみなす準定常理論を用いてきた.しかし準定常理論では手の加速度や迎え角の変化による手周りの流れの時間的変化を考慮していないため,実際に発生する力を過小評価してしまう.そこで本研究では非定常流体力の発生メカニズムの解明を目指し,泳動作により発生する非定常流体力を,準定常理論から導いた値と,流体に与えた運動量の変化から推定した値と比較することを行った. 本実験では,動作の再現性が高いロボットアームを用いて泳動作を再現させ,流体力の測定を行った.動作中に発生する力は,ロボットアーム本体上部に取り付けた天秤により計測した.今回は右手部(面積:0.171m2)が発揮する力のみを対象とするため,腕による力を差し引いた.また流体力の計測と同時にPIV(Particle Image Velocimetry)計測を行い,手部の中心点(中手骨頭)を通る水平面内の流れ場を0.07sごとに可視化した. 本実験における運動量の変化から推定した力は,準定常理論では表すことのできなかった非定常流体力のピークや,大きさの特徴を再現することができた.これらのことから非定常流体力の本質は,手部の運動により流体を加速させることによる,流体に与えた単位時間当たりの運動量の変化であると考えられる.
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