研究概要 |
昨年度末の段階で,本研究テーマの重要部を占める,再生筋における筋衛星細胞(サテライトセル)の挙動を生体上で観察することに成功した.こ.の実験は,Fischer344系ラットのヒラメ筋によりおこなった.実験3日前の段階で,ヒラメ筋の遠位1/4部に挫滅損傷を与えておき,実験時には吸引麻酔下にあるラジトの下肢の損傷筋(ひらめ筋)をM-cadherin-Qdot複合体/0.1MPBSにて4時間incubationを行った後に,そのまま吸引麻酔を維持し,ラットを顕微鏡下にセットし,筋上のサテライトセルをin vivo real-time imagingすることを可能にした者である。この実験では,損傷方向に移動するの平均移動速度は840nm/1脚であった.損傷を与えていない成熟筋においては,サテライトセルの移動は起きていなかった.しかし,骨格筋は発生過程における形態形成ばかりでなく,生後の筋細胞の成長(伸長肥大)にともなう筋核の増加などは,骨格筋内に局在するサテライトセルの増殖に頼っている.新たな筋節が線維端に形成されながら細長く成長する筋線維において,長軸構造内の均等配置を保った筋核数の増加は,筋線維上に分布は筋衛星細胞の増殖・遊走(細胞運動)・分化によっていると考えられる.増殖・分化は筋形成制御因子の発現などで確認されているが,発育筋における筋衛星細胞の細胞運動について確認されていない.そこで2011度は1発育初期にある生後1から3週齢のFischer系ラジトを用い,筋の長育を支える筋衛星細胞の動態をin vivo imgingし,その遊走特性を検討する目的で実験を行った. 実験手法としては昨年確立された方法と同様とした.生後14日齢のヒラメ筋に対してM-cadherin-Qdot複合体でincubationを行いin vivoにて80分間の連続観察した結果,経時的に移動するゴM-cadherin^+筋衛星細胞を確認することが出来た.遊走は筋線維中央側から筋端方向に起きていた.発育期の筋線維端で盛んに起きる筋節構造の新設に対して筋核の供給がどのように行われているかについては不明瞭であったが,本成果から,発育の筋線維では,筋線維上既存部にある筋衛星細胞が活性化・増殖し,筋線維端に移動し筋端で融合することで筋形成・筋節構造の新設に働くことが明らかとなった,観察できた筋衛星細胞の平均移動速度は105nm/minであった.
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今後の研究の推進方策 |
筋サテライトセルの遊走を引き起こす因子を探り,人工的にサテライトセルの遊走をコントロールできる条件を探る.これらの知見が得られることは,損傷回復や筋病への貢献に繋がると考える, さらに,コンタミの少ない染色画像を得るための実験手法の開発,長時間の観察条件の確率,動画としての画像の取り込みなどを中心に研究を進める.
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