肥満に伴う全身性の炎症反応がインスリン抵抗性を誘導することが指摘されている。そのメカニズムとして、肥満により上昇する血中遊離脂肪酸(FFA)が、マクロファージ(Mφ)の炎症反応を惹起するToll様受容体(TLR)を介して作用している可能性が示唆されている。そこで、6週齢のC57BL/6Jマウスを普通食、高脂肪食、及び高脂肪食で自走回転ケージによる運動トレーニングを実施する群に分け6週間飼育した。高脂肪食群のマウスは普通食群のマウスに比べて3週目から有意な体重の増加が認められた。一方、高脂肪食運動トレーニング群では6週目に普通食群と比べて体重の増加が認められたが、高脂肪食非運動群よりは有意な低値を示した。 6週目の各群のマウス腹腔MφについてTLRの発現を解析した結果、FFAの受容体として機能していることが報告されているTLR2の発現が、高脂肪食群では普通食群に比べて有意に上昇していた。さらに、炎症性サイトカインや誘導型一酸化窒素合成酵素(iNos)などの産生能の亢進も認められた。一方、高脂肪食運動トレーニング群ではそれらの変化は有意に抑制された。次に、肥満に伴うFFAの上昇がTLR2の発現量に与える影響を検討するため、普通食マウスの腹腔MφをFFA存在化で培養した。その結果、FFAによりTLR2の発現が上昇し、炎症性サイトカインやiNosの産生能が亢進した。 以上から、高脂肪食により上昇する血中FFAが、Mφ・TLR2の発現を増加させ炎症性反応を増強し、肥満に伴う全身性の炎症反応を誘導するが、運動トレーニングには、FFAによるTLR2の発現増強を抑制し炎症性反応を低下させ、肥満に伴うインシュリン抵抗性などを改善する効果があることが示唆された。
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