肥満に伴う全身性の炎症反応がインスリン抵抗性を誘導することが指摘されている。そのメカニズムとして、肥満により上昇する血中遊離脂肪酸(FFA)が、マクロファージ(Mφ)の炎症反応を惹起するToll様受容体4(TLR4)を介して作用している可能性が示唆されているが、他のTLRの関与はまだ十分に解明されていない。我々はこれまでに、1)FFA存在下でマウスの腹腔Mφを培養すると、TLR2の発現が上昇し、炎症性サイトカインや誘導型一酸化窒素合成酵素(iNos)の産生能が亢進する、2)高脂肪食により腹腔Mφ・TLR2の発現が上昇することを見出している。そこで、本研究では、6週齢のC57BL/6JマウスとTLR2ノックアウト(KO)マウスを普通食、高脂肪食、及び高脂肪食で自走回転ケージによる運動トレーニングを実施する群に分け、6週間飼育した。 C57BL/6JマウスとTLR2KOマウスのいずれも、高脂肪食によって腹腔Mφの炎症性サイトカインやiNosなどの発現量は普通食マウスと比較して増加した。しかし、高脂肪食肥満TLR2KOマウスのそれらの発現量は、高脂肪食肥満C57BL/6Jマウスと比較してその増加は有意に小さかった。一方、運動トレーニングはいずれのマウスにおいても、高脂肪食による腹腔Mφの炎症性サイトカインやiNosなどの発現量増強をほぼ普通食マウスのレベルまで抑制した。 以上から、高脂肪食により上昇する血中FFAによるMφ炎症性反応の増強には、TLR4のみでなくTLR2も関与していることが示唆された。さらに、運動トレーニングには、高脂肪食肥満による全身の慢性炎症性反応の誘導を抑制する効果があることから、肥満に伴うインシュリン抵抗性などを改善する作用があることも示唆された。
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