競技パフォーマンスに関連付けられる候補遺伝子の一つとしてとして、骨格筋内のαアクチニン3タンパク質の発現調節に関わるACTN3遺伝子が注目されている。本年度は、パワーと持久力の両能力が必要とされる競技としてこれまでほとんど報告がなされていないアルペンスキー選手のACTN3遺伝子型分布について横断的に比較した。ACTN3遺伝子型は、口腔粘膜または血液サンプルを用いてポリメラーゼ連鎖反応TaqManプローブ法によってRR、RX、XX型の3タイプに分類した。その結果、日本人アルペンスキー選手124名(男子71名,女子53名)のアクチニン3遺伝子型分布は,RR型28.2%,RX型46.8%,XX型25.0%であり,体育系大学学生65名(RR型:23.1%,RX型:47.7%,XX型:29.2%)と比較してほとんど差が見られなかったが、国際レベルにある選手11名のACTN3遺伝子型は,RR型18.2%,RX型72.7%,XX型9.1%で、CT群と比べて有意な差(p<0.01)が観察された。またその11名中8名がRX型の選手であった。さらに,男女別のアクチニン3遺伝子型分布は,男性ではRR型33.8%,RX型38.0%,XX型28.2%に対し,女性ではRR型20.8%,RX型58.5%,XX型20.8%であり,性別間で分布に差が見られた(p=0.013)。また、世界ランキングポイントが上位30名の選手におけるポイント平均は,Slalom、 Giant Slalom、Super Giant Slalom 全ての種目においてRX型の選手が最も優れた成績となった。高い脚筋力・筋パワーに加え,優れた有酸素能力を必要とするアルペンスキーには、RX型であることが高いパフォーマンスを発揮するために重要である可能性が示唆された。
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