自閉症スペクトラム障害やADHDなどの発達障害では、双生児研究などから遺伝要因がその発病に有意な影響を与えていることが明らかにされている。その「遺伝要因」の中には生殖細胞あるいは受精卵・胚初期のレベルで生じた問題が含まれている可能性がある。近年、自閉症スペクトラム障害では出生時の親の年齢(特に父親の年齢)の高さが影響することが報告されている。本研究では発達障害における出生時の親の年齢とともに生殖医療の影響について検討した。 出生時の親の年齢および生殖医療の発達への影響を検討するため、東京大学医学部附属病院こころの発達診療部外来のカルテ調査を行った。自閉症スペクトラム障害(ASD)552人、注意欠如多動性障害(ADHD)87人、トゥレット障害(TS)123人について、東京都における同じ年生まれの出生者の親の年齢と比較したところ、父親の年齢、母親の年齢はASD群では34.2±5.8歳(平均±SD)vs.33.0歳(平均)および31.6±4.7歳(平均±SD)vs.30.4歳(平均)、ADHD群では35.1±6.2歳(平均±SD)vs.32.8歳(平均)および32.2±4.9歳(平均±SD)vs.30.2歳(平均)で、患者群はいずれも東京都の平均より有意に出生時の父親、母親の年齢が高かった(p<0.001)。これに対して、TS群では父親32.0±4.9歳(平均±SD)vs.32.7歳(平均)、母親29.8±4.5歳(平均±SD)で東京都の平均と差がなかった。またASD群では生殖医療を受けた例は全体の4.3%で近年の我が国全体の平均より高く、多胎の影響を考慮してもASDのリスクと関連している可能性が示唆された。 今後これらの結果を様々に確認するとともに、健康教育への還元方法について検討をしていきたい。
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