研究概要 |
本研究は,青少年の喫煙,飲酒を含む薬物乱用に関して時系列的モニタリングを行い、国際比較可能なデータ・アーカイブシステムを構築することを目的とする。 本年度は,以下の結果を得た: (1) 全国の5,977の高等学校から無作為に抽出した116校の生徒を対象として調査した。116の高等学校のうち、50.8%にあたる59校の協力が得られ、その29,273人の生徒について調査を実施した。有効回答は、29,114であり、これを集計の基礎とした。 (2) 高校生の違法薬物経験率(生涯経験率)は、大麻についてみると、1年生で0.3%、2年生で0.3%、3年生で0.5%であった。薬物別にみると、有機溶剤がやや多い傾向があるが、大麻、有機溶剤(シンナー等)、覚せい剤、MDMA(エクスタシー)乱用の頻度に大きな差はない。最近の他の調査結果と比較すると、高校生の違法薬物乱用経験率は、中学生と変わらず、18-22歳の青少年より低かった。 (3) 学校基本統計に基づく高校生の人数をもとに薬物乱用を経験している生徒の人数を推定すると、高校生では、大麻乱用経験者12.387人、有機溶剤(シンナー等)乱用経験者16,160人、覚せい剤乱用経験者11,018人、MDMA乱用経験者9,282人であった。 (4) 諸外国と比較すると、我が国の高校生の違法薬物経験率は、欧米諸国に比べて著しく低く、特に大麻乱用は、米国や欧州諸国に比べて2桁近く低くかった。 (5) これまで一度でも、違法薬物乱用を経験した高校生は、2006年調査では2004年調査にくらべて増加したが、2009年調査では全体として減少した。この傾向は、男子、女子とも見られた。 (6) 次年度に向けて、アジア諸国のうち、信頼できる調査が行われていないベトナムについて共同研究計画を作成し,質問紙内容を確定した。
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