65歳以上の高齢者52名の参加者を得た。参加者の年齢は平均74.8歳(64歳から86歳、標準偏差5.6歳)であった。参加者の運転頻度は、24名(51パーセント)の参加者は毎日運転していると答えており、参加者の活動的な運転生活が認められる。週3日以上運転している参加者は57人中56名(98%)であった。 指導員評価平均値を見ると教育前の評価平均値が3.1(標準偏差.46)であったのに対して教育直後は3.8(標準偏差.37)に上昇した。この変化は統計的に有意な差であった(p<.01)。しかし2ヵ月後では再び低下し(3.3(標準偏差.69))、教育前の水準に戻ってしまった。運転行動評価平均値については2ヵ月後に効果は消失した。さらに類型別に合図、確認、速度、場所、一時停止、操作の6類型に分けて、教育前、教育直後、2ヵ月後の指導員評価について有意差検定(t検定)を行った。その結果、6つの類型別行動評価のいずれにおいても教育直後の評価は有意に上昇した(いずれもp<.01)。そして、確認と一時停止行動は教育直後に比べて2ヶ月には評価の低下を見るものの、教育前と比べて依然として有意な差が認められており、教育効果の持続が認められた(p<.01)。自己評価についての教育効果は次のとおりである。教育前の自己評価平均値は5点満点で4.3(標準偏差:.57)であり、高い自己評価が認められた。教育直後の自己評価平均値は3.7(標準偏差:0.80)となり有意に低下している(p<.01)。しかし教育後2ヵ月後の自己評価平均値は4.4(標準偏差.50)と、教育直後に比べて再び有意に上昇した(p<.01)。認知機能について、MMSEとストループテストにより診断した。教育前の運転行動評価(指導員評価平均値と類型別評価)とこれら3種類の認知機能検査との相関関係を調べたところ、特に、ストループテストとの間に高い相関が見られたことから、ストループテストは運転行動予測指標としてセンシティブなテストである可能性が示唆された。さらに教育効果と認知機能との関連を検討しつつある。
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