研究課題
本研究は軽度認知症ドライバーの為のメタ認知技能訓練の可能性を明らかにすることを目的として計画された。高齢ドライバーにあっては他の年代と比べ特に過信傾向が認められる(太田2004)。この傾向からは、高齢者をして危険運転行動へと導くことが懸念される。従って、安全運転教育の焦点は正しい自己評価技能訓練へと向けられている。本研究は認知機能の衰えが自己評価技能教育において障害となりうるか否かを検討した。65歳以上の高齢ドライバー60名を対象に、ミラーリング法による教育実施前に、ストループ検査を行い、カラーワード呼称所要時間を認知機能の指標として3群に分け、群間の教育効果の差異の有無を検討した。教育前を基準とした教育後の指導員による運転行動評価変化率はグループ1(呼称所要時間:36秒以内)、グループ2(36.1~46秒)、グループ3(46.1秒以上)いずれの群も正の値を示し、教育前に比べて運転行動は改善された。3か月後においても、いずれの群も正の値を示し、教育効果は持続していた。そして、この改善傾向は、3群間で差が認められなかった。このことは、認知機能の高低が教育効果に影響をもたらさなかったことを意味する。指導員による運転行動評価と同様に、自己評価の変化率についても3群間で比較検討した。教育前と比較して教育直後、および3ヶ月後の自己評価変化率はいずれの群も負の値を示した。即ち教育前に比べ教育後に自己評価が低下した。3群の平均値の差異を一元配置分散分析により検定したところ、教育直後と、3ヶ月後いずれにおいても3群の間に有意な差は認められなかった。自己評価が低下したことは、過大な自己評価による危険敢行出現の問題からすると安全上望ましい方向への変化と言える。そして、少なくとも本調査への参加者においては認知機能の違いが自己評価技能への教育効果に差異をもたらさなかったことを意味する。
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人と車
巻: 48巻1号 ページ: 18-20
交通安全教育
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国際交通安全学会誌
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