「感情と安全運転」をテーマに、自動車運転時の感情コントロール技能を向上させるための教育プログラムを開発することが本研究の目的である。ドライバーが自らの感情状態に対して自己管理できる姿を目指し、自己理解のための教材作成と教育効果測定を実施し、より効果的な教育プログラムを開発することを目指す。平成23年度の研究成果は以下の通りである。 (1)行動変容を導くための感情コントロール教育プログラムの開発 これまで開発してきた教育プログラムでは、自己効力感が向上するなど意識の変化は見出されているが、行動変容に関する教育効果は明確に確認されていない。そこで、プログラムを改良し、自己の運転行動を振り返る機会をの連のプログラムの中に取り入れ、この振り返りが行動変容を促進するかどうかを検証した。実験参加者78名を統制群(感情コントロール教育のみを体験)と教育群(感情コントロール教育と自己の運転行動の振り返りを体験)の2群に分け、葛藤走行条件(焦ってはいるが安全運転に努める運転課題)での運転エラー数を比較した。その結果、意識の変化に関しては、両群ともにストレス反応が低下し、自己効力感が向上するなど、同程度の教育効果が見出された。運転エラー数に関しては、統制群よりも教育群においての時不停止や安全不確認等の運転エラーが大幅に減少することが観察された。その効果は3週間後の再調査においても持続していることが確認された。教育プログラムをより効果的に運用するためには、既存の教育手法を組み合わせるなど、より高度な技法が求められる。 (2)感情コントロール教育のための教材開発 感情コントロール教育実施時に必要となる教材をより充実させるため、新たに動画方式による自己診断教材を開発した。運転中の感情経験をアニメーションによって表現するものであり、渋滞でイライラするなどの動画場面を30場面制作した。
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