神経筋接合部周辺にあるシナプス核(エンドプレート核)は、アセチルコリンレセプターの発現調節を担う。本実験では、エンドプレート核数とレセプター凝集に関わる重要な分子Muscle specific kinase (MuSK) およびTyrosine phosphatase (Shp2)のmRNA発現の発育・加齢変化について調べた。 1週齢~130週齢のラットから横隔膜および胸鎖乳突筋を摘出した。各筋に蛍光染色を施した後に単一筋線維に単離し、共焦点顕微鏡でEPを観察・定量した。MuSKおよびShp2のmRNA発現量をリアルタイムRT-PCRを用いて定量比較した。 25週齢までの発育段階においては、両筋とも筋線維直径、EP体積・表面積、EP核数が急増し、EP核ドメインはほぼ一定の値を示し、その後90週齢(生存率70%)まではすべての測定項目が漸増した。90~130週齢(生存率25%)においては、EPの断片化が顕著になり、EP体積、EP核数に多少の変動が認められたが、EP核ドメインは比較的一定の値を保った。1つの核が発現するエンドプレート領域は厳密に制御されており、筋の種類や加齢に影響されないことを意味する。MuSKmRNAの発現量は25週齢までの発育段階で急激な減少を示し、その後は130週齢まで一定の値を示した。生後数週間のエンドプレート拡大すなわちAChRの凝集スピードとMuSKの発現量が比例していると推察される。一方、Shp2mRNAの発現量は90週齢まで顕著な変化を示さなかったが、130週齢にかけて増加が認められた。エンドプレートの断片化には、Shp2の発現増加が関連する可能性がある。両mRNAともDIAがSTMに比べ有意に高い発現量を示したことは、筋活動量の違いに基づくAChRのターンオーバー速度と関連していると推察している。
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