研究概要 |
予防医学の分野における現在までの肥満遺伝子研究の応用例は,遺伝子検査そのものに焦点が当てられていて,検査後にどのような改善プログラムを提供するのかについては着目されていない.そこで本研究は肥満関連遺伝子多型と体力、体組成,メタボリックシンドロームリスクとの関連について検討した。被験者は、健康な日本人男女716名とした。測定項目は、メタボリックシンドローム関連指標、体力、身体組成(DXA)、及びPPARγ遺伝子多型であった。被験者は、年代別最大酸素摂取量の高い群と低い群の2群に分類し、さらにPPARγ遺伝子C1431T多型のCC群およびCT+TT群の2群に分類し、年齢を共変量とした2元配置分散分析により比較検討した。その結果、体力と遺伝子多型はメタボリックシンドロームリスク(Z値)に対して有意な相互作用が認められた。さらに、肥満関連遺伝子多型と強度別身体活動時間およびメタボリックシンドローム(MetS)リスクとの関連性について横断的に検討した。被験者は健康な成人女性302名とし、問診票の記入および安静時血圧の測定後、採血を行い、中性脂肪、HDLコレステロール、血糖値、HbA1c、肥満関連遺伝子多型を解析した。肥満関連遺伝子(多型)は、PPARγ(C1431T)、FABP2(Ala54Thr)、B3ADR(Trp64Arg)、UCP1(A-3826G)、UCP2(Ala55Val)、LEPR(Gln223Arg)、GHRL(Leu72Met)について解析した。身体活動強度および時間は3軸加速度計によって評価した。B3ADR遺伝子のTrpArgおよびArgArg型は、MetSリスク(Z値)と低~中強度身体活動時間との間に有意な相関が認められたが、高強度身体活動時間との間に有意な相関は認められなかった。UCP2遺伝子のAlaValおよびValVal型は、MetSリスクと低強度身体活動時間との間に有意な相関は認められなかったが、中~高強度身体活動時間との間に有意な相関が認められた。これらの結果は、オーダーメイド運動処方の基礎データとして活用できると考えられる。
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