研究課題
1. 大きな集団を用いた疫学手法による解析(1) 昨年度、我々は地域基本健康診査65歳以上の受診者640名について受診時保存血漿中eHSP70を測定し、男性より女性で血漿eHSP70が上昇しているが、80歳以上の高齢者では男女差がなくなりしかも他年齢群より低下することを確認した。さらに、脳梗塞、心筋梗塞、癌の被患歴の有る者はeHSP70が上昇しており、eHSP70がこれらの疾患と関連し、かつ早期発見のためのマーカーとして有用であることを確認した。また、eHSP70は、骨格筋量、握力、歩行速度ともよく相関し、筋肉量とその機能低下を示す廃用性症候群(サルコペニア)と関連することが示され、eHSP70の運動神経保護機能が高齢の筋肉減少を防ぐ可能性が示唆された。これらの結果は、高齢者におけるeHSP70の早期診断マーカーとしての有用性を示すものである。(2) β_2MGについては、血清IL-6濃度と組み合わせて場合、両濃度が高い者は「虚弱」であるオッズ比がリファレンスに比べて5倍以上に上昇することが明らかになった。これは、虚弱が炎症のみならず、腎機能の低下を伴った場合、極めて誘発される可能性が高くなることを示唆したものである。2. 高強度有酸素性及び無酸素性運動負荷試験を用いたバイオマーカーの機能解析(1) 高強度有酸素性運動(70%最大酸素摂取量の強度で1時間にわたる自転車エルゴメーター運動)と高強度無酸素性運動(70%最大心拍数の強度の腕伸展運動10分間3セット)を行い、血漿中HSP70とATPの測定を行ったところ、血漿中HSP70とATPの値が有意に相関し、運動中の血球崩壊によって血中に放出されるATPが白血球中のHSPを血中に誘導することを明らかにした。これらの結果によりストレス反応としてのHSPのメカニズムが解明された。
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巻: 17 ページ: 136-149
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