研究概要 |
食という行為は見る・触る・匂いをかぐ・音を聞く・味わうという五感を刺激する唯一の活動であるが,今日の食生活においては,味覚障害などこれらの五感を十分に生かせない状況がある。そこで,「家庭科における五感を育む食教育のカリキュラムを構築すること」を最終目的として平成21年度は(1)「宮崎県の小学校・中学校における食育の実態調査~五感を生かした味覚教育を中心に~」の実態調査と(2)「発達過程における味覚閾値・咀嚼力の変化や性差,その要因」についての予備調査を実施した。 調査は平成21年10月~11月に,宮崎県の全小学校中学校を対象に郵送による質問紙調査を行った。有効回収数(有効回収率)は,小学校159部(60.5%),中学校79部(53.7%)であった。食に関する年間計画の作成状況は,小学校が79.3%,中学校が62.0%であり,県の目標値(平成22年度)93%を下回っていた。食育実践内容を校種別に見ると,小学校は地域との連携を軸に「農業体験」「栽培活動」が,中学校は家庭科の授業を中心に「料理講習」が積極的に行われていたが,小中学校ともに「味覚教育」「咀嚼教育」はあまり行われていなかった。味覚教育の例としては「家庭科のフレンチドレッシング作りで塩分・酸味のバランスを換えて食べさせた」「みそ汁の材料の味覚体験とみそ汁作りの献立」が各1校あげられた。子どもたちの味覚・咀嚼の変化は小中学校ともに,「よく噛まないようになってきた」,「柔らかいものを好むようになってきた」が約7割,「濃い味を好むようになってきた」,「すっぱいものを好まないようになってきた」が約5割であった。一方,フランスの味覚教育についてはほとんど認知されていなかった。本結果を元に小学校において四味識別能(甘味・塩味・うま味・酸味)の予備調査を行った結果,酸味の識別能が低く,食生活との関連が示唆された。
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