研究概要 |
本研究は、生活者のリスク認知とリスク対応の実態を把握し、生活者の安全に裏付けられた安心の実感にむすびつくリスク管理とリスクコミュニケーションのありかたを、アンケートによる社会調査データを用いて明らかにすることを主な目的としている。 前年度までに既に課題1(20年調査について考察の見直し、理論研究、質的調査)および課題2(分析モデルの精緻化)は遂行済みであり、23年度末には課題3として調査票を作成し実査を行った。調査概要は以下のとおり。調査名:「生活者のリスク認知とリスク対応に関する国際比較調査」。期間:2012年2-3月。対象:20~69歳の男女[日本]・[米国]全国、[中国] 北京・上海・瀋陽・成都・広州。方法:[日本]・[米国]郵送調査、[中国]電話調査。有効票数(率):[日本]1,009(50.5%)、[米国]1,527(46.8%)、[中国]1,000。24年度は調査データの分析と成果発表を中心に行った。主な結果は次のとおりである。①日本では原発事故や放射性物質による健康被害への不安が拡大し、20年度調査から統計的有意な増加が見られた。直接被害に遭わなかった米国・中国でも同様の傾向があり、リスクに対する予兆性認知が見て取れる。②リスク管理機関(国、市町村、大学、企業、NPO)への信頼について、総じて日本では他の2カ国に比べていずれの管理主体に対しても信頼の程度は低い。信頼の程度はリスクの種類により異なる(地震>原発事故、放射性物質による健康被害)。③管理機関への不信が大きいとリスクへの不安は大きくなる。基本属性(年齢、性別、家族内のリスク弱者の有無、災害経験)、リスク管理者への信頼(情報、専門性、姿勢)を説明変数とし、リスク認知に対する影響の程度を重回帰分析によって調べた結果、とくに国や市町村への信頼(情報、専門性、姿勢)とリスク認知とのあいだに関連が見られた。
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