研究概要 |
本研究は、繊維材料を消費実態にあわせて測定することを目的に開発されたKESシステムを基盤に、現在市場にあるが適切な評価方法が確立されていないソフトマテリアルに対して、改良型評価システムの構築を行ってきた。研究の最終年度にあたる本年は、システムの改良ならびに有用性の検証を行った。その結果、以下の成果が得られた。 (1)精密伸張および圧縮特性評価システムの改良と検証 高い吸水性を持つポリグルタミン酸ナノファイバーに伸縮性を付加する目的で架橋した不織布を水中で繰り返し伸張-回復させ、ヒステリシス曲線を得ることの有用性がわかった。その結果は、ユニークな天然物系ナノファイバーの作製につながった。(繊維学会誌,Textile Research Journalに掲載) 変位精度をあげた圧縮試験機(KES-G5s)の球圧子の大きさや試料台の材質を検討することで、薄膜の圧縮条件を設定した。この条件のもと、PVA, Nylon6, PU, PCL, PCL/catechinナノファイバーウェッブの圧縮試験より試料間の差をもとめ、特に繊維間摩擦によるヒステリシスが顕著なことがわかった。 (2)感性と機器分析結果との融合 平成21年度に試作したKES-SE表面試験機にアタッチメントをつけた測定法で毛布を測定し、消費者の感性評価との間によい対応がみられた。またより手触り評価に近いモードを考慮した編み布の摩擦特性測定法の検討も行った。 ナノファイバー集合体の薄膜が、テキスタイルの特性を示す非線形性や摩擦などのエネルギー損失(ヒステリシス)を本研究で構築したシステムで測定することが可能になった。したがって、本研究の成果は新しい触感の創製に将来役立つ改良型KES評価システムとして有用であると考える。
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