ネギ属野菜やショウガ科野菜の三次機能成分としてスルフィド類やジンゲロール類がある。特に、スルフィド類などの含硫成分は調理などにより二次的に生成し、ある種の動物に対しては毒性を示すことが明らかとなっている。本研究では、調理加工に伴い生成または増加していく重要な香辛成分に着目し、その生理機能と作用メカニズムを明らかにすることを主目的とした。 平成21年度の研究実績として、スルフィド類の一般的な調理加工過程での成分変化を詳細に調べた。高温でのニンニク加熱において硫黄原子数が3以上のポリスルフィド類が急増し、煮熟などのマイルドな加熱においてはジアリルジスルフィド(DADS)の生成が有意に増加した。この美味しさにも関与する香気成分DADSについて、in vivoでの生理機能性として発がん抑制が期待される第二相解毒酵素誘導能を調べた。その結果、培養細胞レベルでは硫黄原子数の多いポリスルフィドに比べて低い誘導能しか示さなかったDADSは、動物投与実験において肝臓、小腸などの臓器において有意な第二相解毒酵素誘導能を示した。これは、DADSが代謝・吸収によって変化したことにより生理機能性を発揮した可能性を示唆しており、その生理機能性を示した代謝物の同定や作用機構の解析が重要であると考えられた。 一方、ショウガ香辛成分のジンゲロールについても胃がん細胞を用いた生理機能性(アポトーシス)とその毒性(ネクローシス)の濃度範囲をショウガオールと比較しながら精査した。入手可能だった代表的な食品香辛成分についても、同様に生理機能性と毒性の評価(胃がん細胞)を実施し、二面性をもった香辛成分を顕在化することに成功した。
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