研究分担者 |
正田 純一 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (90241827)
石井 哲郎 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 教授 (20111370)
高橋 宏 筑波大学, 大学院・人間総合科学研究科, 准教授 (70236313)
宇都宮 洋才 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (60264876)
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研究概要 |
酸化ストレスに対する生体の防御機構の中で転写因子NF-E2 related factor2(Nrf2)は,本学において作製された同遺伝子欠損マウスの解析により,生体の侵害刺激に対する酸化ストレス防御機構あるいは解毒機構を発動制御する統括的因子であることが判明している.申請者が行った実験において,人為的に脂肪性肝炎を引き起こすコリンメチオニン欠乏食を野生型マウスとNrf2 KOマウスに投与したところ,Nrf2 KOマウスでは肝の脂肪化,炎症細胞浸潤,線維増生が野生型マウスに比較して,短期間に,しかも高度に出現することが判明した.また,肝脂肪化および炎症の程度に平行して,肝における鉄の貯留がNrf2 KOマウスでは高度であり,酸化ストレスの発生および増加に関与するものと考えられる.これまでの検討により,肝における酸化ストレスの中心である脂肪酸の過酸化物を胆汁中に排泄する肝トランスポーターmultidrug resistance-associated protein(Mrp)familyの発現制御が,Nrf2によって行われていることが明らかとなっており,さらに,細胞内の鉄排泄トランスポーターであるFerroportin1についてもNrf2の制御下であることが明らかとなった.これらのことより,Nrf2の活性化がMrpやFPN1の発現を誘導することにより,細胞内の過酸化脂質や鉄の排泄を促進し,細胞内の酸化ストレスを減少すなわち防御的な働きを果たしているものと推測された.Nrf2の存在がNASHの病変形成・進展,更には肝発癌に抑止的に働いていることが予測され,機能性食品や各種薬剤等によるNrf2の賦活化は、今後のNASHに対する治療な重要な標的となる可能性が示唆された.
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