研究概要 |
昨年度において、マクロファージ様RAW264.7細胞と小腸上皮様Caco-2細胞の共培養により確立したin vitro腸炎モデルにおいて、レンチナンの管腔側への前処理が、RAW264.7細胞からのTNF-α産生に影響を与えることなくCaco-2細胞のIL-8mRNA発現およびNF-kBの核内移行を抑制することを見出した。また、共焦点レーザー顕微鏡による観察から、レンチナン処理によりCaco-2細胞において基底膜側に存在するTNFR1の分布が顕著に減少すること、さらに氷上の培養条件では分布に影響が見られないことから、レンチナン処理によりTNFRIがインターナリゼーションを起こすことが示唆されている。今年度は、レンチナン特有の現象か否かとインターナリゼーション機構について検討した。方法としては、RAW264.7細胞とCaco-2細胞の共培養状態に、ラミナリンを管腔側から処理し培養を行った。培養後、トランズウェル膜上のCaco-2細胞について抗TNFR1抗体を用いた免疫染色を行った後、共焦点レーザー顕微鏡にて観察を行った。さらに、エンドサイトーシス阻害剤であるdansylcadaverineとcytochalasinDを前処理し、レンチナンを管腔側から処理・培養した後、Caco-2細胞におけるIL-8mRNA発現をリアルタイムPCR法により調べた。 顕微鏡観察の結果、ラミナリン処理では、無処理区と同様にCaco-2細胞内のTNFR1が管腔側から基底膜側にかけて一様に存在が確認され、分布には影響が見られないことが明らかとなった。また、クラスリン依存性エンドサイトーシス阻害剤であるdansylcadaverine前処理のみで、レンチナンによるCaco-2細胞のIL-8mlmA発現の抑制が解除された。以上の結果より、Caco-2細胞におけるTNFRIのインターナリゼーションにはβ-グルカンの構造のうちβ-1,6分岐が必要であることが示唆された。また、レンチナンはアクチン依存性ではなくクラスリン依存性エンドサイトーシスを促すことでTNFR1のインターナリゼーションを起こすことが示唆された。これらのことからレンチナンは細胞表層のTNFR1の発現を低下させることによって、Caco-2細胞のTNF-αに対する感受性を鈍くし、抗炎症作用を発揮しているのではないかと考えられた。
|