研究概要 |
平成22年度は,中・高にわたる首尾一貫した授業開発のために,両校の公立学校教員と大学教員が協働し研究授業を組織し,「関数」領域関する授業を評価し,モデル授業を提案した。 高等学校において数学的リテラシーを育成するために,先ず,我が国における高等学校での数学科の授業モデルについて批判的に検討を行った.その結果,実世界に広く応用される関数が,実際の授業においては抽象的・数学的に指導されていることを確認した.それを踏まえて,高等学校で指導される関数に関して,日常や社会生活において広く応用されることを強調できる指数・対数関数に焦点を当て,オランダのフロイデンタール研究所の現実的数学教育(RME)理論に基づき開発された実験教科書や市販の教科書,そして数学的リテラシーを育成するためのコンテスト問題等を分析した.また,フロイデンタール研究所の前所長であるJan de Langeによる数学的活動のモデルを参考として,数学的リテラシーに基づく授業モデルを指数・対数の単元を例として構築した.得られた授業モデルは3つの特色を持っている.それらは,「概念的数学化」と「応用的数学科」をバランスよく取り入れたモデルであること。将来数学を日常や社会生活にいて道具として活用する文系のクラスに対する授業モデルであること.そして,我が国における高等学校で要求される指導内容と指導時間を配慮した現実性をもった授業モデルであることである.また,本研究と通して,中・高の教員が,現実の授業を反省的検討し,新しい授業モデルを構築することで,教師の意識がどのように変化していくかについても,その過程をインタビューすることができた.
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