本年度の研究成果は以下の三点になる。 第一は、OPPAで育成できる学力モデルを明確にしたことである。このモデルとOPPシートの構成要素との関係を明らかにし、さらに、このモデルが学力を形成する視点を重視していることも明確にした。 第二に、OPPシートを用いて昨年度実施した小学校6年生「ものの燃え方」単元の授業改善の研究を行なった。その方法は、OPPシートに学習者が書いた学習履歴を分析し、問題点を抽出し、改善の手だてを明確にした。また、OPPシートの「本質的な問い」にも、一部不備な点がみられたので、改善を行った。それに基づいて、再度授業を実施し検証を行なったところ、昨年度の問題点をほとんど払拭できた。 そのことから、OPPシートの学習履歴には学習者が「最も大切だと思ったこと」を書かせるので、それが教師の意図と異なった場合には、授業を改善する必要があり、具体的改善点を明確にできることが実証できた。 第三に、高校生物の「遺伝」「生殖」「発生」などの単元を事例にしてOPPシートを作成し、授業を実施した。これらの単元では、学習者が記録し外化した学習履歴に対して、教師がどのような内化や内省を促すコメントを書けば、学習者の資質・能力を高めることができるかという研究もあわせて行なった。その結果、教師の適切なコメントは学習者の資質・能力を高めることはまちがいないことが明確になった。ただし、最初から教師の想定している学習履歴を書くことができる生徒に対して、どのようなコメントを書けば、さらに資質・能力を高めることができるのかについては、課題が残った。
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