本年度は研究の最終年度にあたるので以下の四点から研究の総括を行った。 第一に、研究の総括として高次の理科学力を育成するのに有効な教育方法の一手段であるOPPA(One Page Portfolio Assessment)の理論書を研究代表者が刊行したことである。OPPAは、たった一枚の用紙を用いるだけである。このことによって何がどこまで可能になるのか、またその背景にある考え方は何か、それを実践に具体的にどう生かすのか、等々の内容が考察され、一枚の用紙の可能性を探った。 第二に、小・中学校および高校理科の授業実践を通してOPPAを活用した高次の理科学力を育成する具体的方法を現場の先生方と検証したことである。その結果、OPPAがメタ認知の育成に有効であることが明らかになった。 第三に、高次の理科学力を育成するためには、授業研究がきわめて重要であるので、OPPAの考え方を導入して授業改善に関わる研究を進めかつそれを検証してきたことである。OPPAは授業改善にも有効なツールとなりうることが確認できた。OPPAは、授業の中で「一番重要なこと」を学習者に書かせているので、その内容の適否から授業の効果を明確にし、授業改善をはかることができた。 第四に、OPPAの考え方は高次の理科学力の育成だけではなく、他教科や自主学習ノートなどの実践においても理科と同様な効果を確認することができた。教育実践において重要なのは、特定の方法が特定の教科だけでなく他の分野などにおいても普遍的な効果を持っていることである。全ての教科や内容において確認できているわけではないが、今後の研究の広がりと深まりにつなげていくことができるのではないかと考えられる。
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