研究概要 |
2003年と2007年のTIMSSにおいて小・中生を対象として共通に出題された論述形式を含む自由記述式問題の解答に注目し,各国の児童生徒の正答率や無答率を分析し,学会で発表した。結果としては,我が国の小・中学生の自由記述式問題の正答率や無答率は両調査に参加した成績上位国の平均値とほぼ同様であり,その傾向は2003年と2007年とでほとんど変化していないことが明らかとなっている。 2003年のTIMSSにおいて小学生に対して出題された「日光の必要性」課題を分析したところ,採点基準では誤答に分類されていても,当該学年までの既習内容を用いた思考力という意味では評価に値するものが含まれていることが明らかとなった。 TIMSSにおける日本の児童生徒の記述回答を,独自の観点から分析を行った。その結果,科学用語を用いて論理的に回答できている割合が非常に低いことが明らかとなり,現在その経年変化を分析中である。同時に,日本の小学校理科教科書より疑問文を抽出し,その表現形式の特徴について分析を行い,結果を学会で発表した。 TIMSSの生徒質問紙の回答を用いて,理科授業における日常生活との関連について整理し,科学的リテラシーの観点から整理した。また,収録した授業ビデオとトランススクリプトを用いて,教師の発問とそれに対する生徒の応答を分析単位とした,理科の授業分析を行い,学会で発表した。 小学生のノート記述を分析することを通して,仮説を子どもが立てるときに何を根拠にしているのかを調べた。その結果として,より妥当性が高い根拠を述べるようになっていくためには,それを意図した指導が必要であることが明確になった。また,子どもが見えないものを推論していくためには,提示事象のあり方を検討する必要がある。
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