研究概要 |
本研究の目的は,教育実践の「デザイン研究(design-based research)」において,形成的評価をこれまで以上に有益なものにするための統合的な評価手法を開発し,その実証的検討を行うことである.今回開発するものは,コンピュータを用いた協調学習支援環境において学習者自らが自分自身の学習進捗状況を的確にモニタし,次の学習へと進めるための形成的評価ツールである.このツールは,(1)学習者が自分が参加しているネットワーク上の対話においてどのような知識発展が認められるかを自己評価するための「知識構築ポートフォリオ」と,(2)そのシステム全体として社会的知識がどのように発展しつつあるかを捉えようとする知識のネットワーク分析の2つから構成される.こうした異なるレベルの知識発展を学習者自らが統合的に評価することによって,自己学習能力の更なる進展が期待される.本研究では,こうした学習者のための評価ツールが後の学習成績に与える影響を実証的に検討していく. 本年度は特に「知識構築ポートフォリオ」に関連する文献のレビューと,複雑系ネットワーク科学における知識発展評価のための分析アルゴリズムの検討を行った.ポートフォリオに関しては,知識構築の必須条件の抽出と,それを展開する組織の持つべき活動の様相を形成的に評価するための理論的な背景を確立するに至った.また,知識発展評価のための分析アルゴリズムは,CSCL環境下の具体的な学習活動の記録を事例的および数量的に分析することによって,補完的な関係性が見いだされた.
|