本研究の目的は、ものづくりやスポーツにおける人間のスキルの本質を究明し、その成果を利用して、スキル評価可能なコンピュータ・ベースド・テスティングシステムを実現することにある。本年度は、特にスキルにおける筋肉の使い方の寄与や役割を解明し、スキルの自動評価へと結び付けていくことをめざした。本年度のテーマに関して以下を実施し、成果を得た。(1)適切な評価対象課題の検討を行った。前年度までのゴルフパタースウィングにかえ、筋肉の使い方とスキルとの関連がより明瞭な、鉄棒の逆上がりを課題に設定した。(2)大学生を被験者に、評価指標の抽出を目的として、ワイヤレステレメータシステムによるデータ収集を行った。(3)逆上がりスキルを有する被験者群および有しない被験者群内で、それぞれスキルに関連した共通特徴の抽出を試みた。(4)共通特徴は必ずしも出現せず、当該課題においては、前年度までに開発した、複数の特徴出現の程度をベースとする評価法を適用できないことが知見として得られた。これは被験者の筋肉量の相違によるフォームの違い等に起因すると解釈される。そこで、特徴出現の不確実性を考慮した新たな評価法を考案した。(5)筋電計で得られた値の時系列的変化を追跡しても、詳細な生起事象の解釈が困難な場合が多い。そこで筋電計に、カメラ、加速度センサを加えたデータ収集を改めて行い、総合的に分析することで、生起事象の解釈を行った。なお、より精密な分析を行うにはセンサ間の同期を正確にとる仕組みを構築する必要がある。
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