中国華北平原、特に白洋淀流域を対象として、生態系サービスすなわち自然の恵みを最大限に活用して統合的土地・水資源管理を実現させることを目的とした調査を行った。白洋淀の水域および湿原植生の面積の季節変化、経年変化を明らかにするために、1984年から2002年の間に撮影された26シーンの衛星画像を幾何補正し、水面積の変動を求めた。湿原植生の抽出については現在検討中である。その他の地理情報については、標高データ、土地利用データ、気候データ、流域の特性に関する主題図等を収集し、地理情報システム(GIS)による集積を進めた。現場における観測としては、流域の地下水位変動を計測するために、平原内6カ所に自記水位計を設置した。以上の作業を通して、白洋淀流域の特性理解を進めている。また、比較研究の手法により流域の特性をさらに明らかにするために、人口圧が大きいという同じ特徴を持つ千葉県、印旛沼流域において同様な調査、観測を進めた。その結果、印旛沼流域、高崎川流域における表流水の硝酸態窒素濃度の時間・空間変動を捉えることができ、水循環と、それに伴う物質輸送、および生態系サービスとしての水質浄化機能について知見を得ることができた。この課題は地下水と表流水の交流関係に重点を置いた研究に進める予定であるが、この手法を白洋淀流域に適用することにより、日本の知識、経験を活かしつつ、統合的土地・水資源管理のあり方を提言することができる。なお、平成21年度は中国から研究協力者を招聘し、千葉県の協力を得て、印旛沼流域における水循環・水管理について議論を行った。
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