閉鎖性水域における水環境問題の理解と解決を目指した調査研究を行った。対象は中国華北平原の白洋淀流域および千葉県印旛沼流域である。平成23年度は白洋淀の現地調査を夏期に実施し、採水・水質分析を行い、データの蓄積を行った。比較水文学研究として取り上げた印旛沼流域では河川水、湧水、地下水の採水、分析調査、河川の流量観測等の詳細調査を実施した。特に硝酸汚染の著しい高崎川流域では集中的な水循環観測を行った。印旛沼流域の湧水に関してはCFCsを使った年代測定を行い、20~40年程度の値を得た。年代値のばらつきが少なかったのは台地地形の開析過程と関連する局地地下水流動系のあり方と関わっていると考えられる。集中調査を行った高崎川上流域では地下水の硝酸汚染が概ね深度60m程度まで進行していること、これが夏期の畑地灌漑による浅層地下水の引き込みである可能性が示唆された。白洋淀においても周辺地域の地下水利用により、湖水から地下水への引き込みが確認されている。白洋淀と印旛沼はどちらも流域における人口圧が高い閉鎖性水域であるが、水循環のあり方に共通点と相違点があることが明らかとなってきた。生態系サービスによる水質浄化については印旛沼流域において地下水流動系の流出域における湿地の浄化機能の利用が本研究で提案された。白洋淀でもヨシの群落を利用した水質浄化機能に関する示唆を得ている。調査研究の過程で様々な関係者と交流を行い、閉鎖性水域の水質問題の解決を共有する枠組みを作ることができた。科学の成果を問題解決に活かすフレームワーク的研究を行うことができたと考えている。
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