研究概要 |
第1副課題「畑地土壌におけるN_2O発生の分析」では,実験室モデル系で,土壌からのN_2O発生を連続測定するシステムを開発し,N_2O発生における細菌と糸状菌の寄与率測定の条件を確立した。このシステムを用いて,N_2O生の土壌温度依存性,冬期カバークロップ栽培の影響,季節変動性を分析した。その結果,不耕起土壌では,測定した温度範囲内では,細菌と糸状菌由来活性の両方で2相的で正の直線的な温度依存性があり,20~40℃域の温度依存性は10~20℃域の約4倍であることを見出した。冬期カバークロップ栽培の影響は,夏作物栽培前の土壌で,細菌由来と糸状菌由来のN_2O発生を2~3倍上昇させること,栽培期間中と収穫後の土壌ではその影響が小さいこと(1.3倍以下)を観察した。また,細菌と糸状菌由来のN_2O生成活性は,収穫後の供試土壌では同レベル(56~60μg N_2O-N/kg土壌/時間)であることを明らかにした。第2副課題、「N_2O生成微生物(脱窒細菌、硝化細菌)と糸状菌の動態解析」では,qPCR/T-RFLP法とクローンライブラリー法によって,冬期カバークロップ栽培で特異的に応答する糸状菌グループとしてCryptococcus属を特定した。また,畑地土壌における硝化細菌と硝化アーキアの動態と主要なグループの特定をアンモニア酸化酵素の遺伝子を標的とした方法で解析した。第3副課題、「脱窒性糸状菌の分離と同定」では、Cryptococcus属菌株を土壌から分離することに成功したが,供試した培養条件では有意な活性は検出されなかった。また,細菌が内生する糸状菌株のN_2O生成活性は内生細菌に由来しないことを明らかにした。第4副課題、「熱帯畑地土壌でのN_2O生成微生物の動態解析」では,バングラデシュの畑地土壌からN_2O生成活性を有する糸状菌の分離を行った。現在,菌株の同定を行っている。
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