研究概要 |
平成19年6月から21年度中に実施した国土交通省霞ヶ浦河川事務所・霞ヶ浦湖心観測所での観測データから,水蒸気,顕熱,二酸化炭素,運動量のフラックスを渦相関法により求めた。さらに得られたデータと気象データを組み合わせることで水面と大気間のバルク輸送係数を導出した.この結果,バルク輸送係数を決めている主要な要素は水面の粗度であることがわかった.大気の安定度の効果は相対的には小さい.粗度の大きさは,風速により与えられることがわかり,高さ10mでの風速が概ね10m/sより大きな領域では,風速と共に大きくなること,風速4~10m/s程度はほぼ一定,4m/s以下では風速が小さい方が大きくなるという結果が得られた.前2つの傾向はさざ波と風波による粗度の推定値から説明できるが,弱風時の傾向は説明できない.データの精度などを確認したが,今のところその原因を特定できていない.次年度に向けての課題である.一方,それ以外の風速領域に対しては,風速,安定度の関数としてバルク係数を推定する式を提案することができた.また,衛星リモートセンシングと周辺気象データからの蒸発量分布の推定するために,まず湖心での観測期間にLandsat ETM+とMODISを対象とし,データを選択して取得した.同時に周辺気象データについては,気象庁のAMeDAS観測所,国土交通省霞ヶ浦河川事務所,防衛省百里基地の観測所に加え,環境省環境研究所臨湖実験施設の気象データを収集した.衛星データからは,水面温度データを推定した.一方,観測所での点データとして得られる気象データ(気温,水蒸気圧,風速)は,地点ごとの観測高さの違いを考慮した補正を施した後にArcGISソフト上で空間内挿を行った後,衛星画像と同じ大きさの画素(ピクセル)にラスター化した.これにより,各ピクセルごとに表面温度,気温,水蒸気圧,風速のデータが基礎データとして得られるたので,これと湖心観測所で(1)で求まるバルク輸送係数を用いて,各ピクセルでの蒸発量を計算した.
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