研究概要 |
シャジクモ類は、湖沼生態系におけるキーストーン種であることが明らかとなっているが、環境省レッドデータブックでは絶滅危惧種(第一種)に指定されている。シャジクモ類の生育はその湖沼生態系の健全性を示す指標となると同時に、シャジクモ類の生育によってその水質浄化作用により湖沼生態系の水質が良好に保たれると考えられている。実験室実験として今年度は、水田産(Chara braunii)および湖沼産(Chara globularis)のシャジクモ類を用いて培養実験を行った。前年度までに確立した成長量測定用の培養容器および長期影響調査用の培養系の両方を用いて、窒素、リン酸塩、農薬の影響を調べた。その結果、近年、両生類の生殖器に対して性転換効果を有することが報告されたある農薬が、植物であるシャジクモ類にも影響を与えることが明らかになった。この結果は社会に与えるインパクトが大きいので、物質名を公開しないでその作用機序をさらに検討する。 昨年度は栃木県湯の湖でサイドスキャンソナーを使用した沈水植物帯の調査法の検討を行い平面分布の調査法を確定することができたが、立体的に現存量を推定することができなかった。本年度は秋田県・青森県に位置する十和田湖で,マルチビームソナーを使用した沈水植物帯の調査法の検討を行った。使用機材はマルチビームソナー(Sonic2024 R2sonic社),RTK-GPS・慣性GPSジャイロ(POS/MV Applanix社)で,小型船の制動・位置情報を記録しながら走査した。地形と水中のエコー(沈水植物や魚影)を分離し地形図を作成した後,沈水植物のみを地形データ上に表示する手法で作成した。その結果、沈水植物の自然高の測定・被度の観測が可能となり,沈水植物生育面積は1948m^2・沈水植物量1324m^3と推定することができた。
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