研究課題/領域番号 |
21310007
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
小畑 元 東京大学, 大気海洋研究所, 准教授 (90334309)
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研究分担者 |
岡村 慶 高知大学, 自然科学系, 准教授 (70324697)
丸尾 雅啓 滋賀県立大学, 環境科学部, 准教授 (80275156)
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キーワード | 海洋 / 鉄 / 還元化学種 / 化学発光法 / 現場型自動分析計 |
研究概要 |
海洋において鉄は生物生産の制限因子となりうる微量必須元素である。近年の研究から、植物プランクトンの鉄の取り込みは、海水中の濃度だけでなくその存在状態に依存することが明らかになってきた。しかし、海水中の鉄の化学形については未だ十分な知見が得られていない。特に生物にとって利用しやすい形態である鉄(II)は、海水中に微量に存在するとの報告があるが、その濃度レベルや分布にはばらつきが大きい。これは、鉄(I)が海水中の酸素によって酸化されやすく、測定が非常に困難なためである。そこで本研究では、海水中の鉄(II)を迅速に測定するため、高感度現場型自動分析計を開発し、海洋における鉄(I)の挙動の解明を目指した。 海水中の鉄(II)の分析法としてルミノール系化学発光法は高感度であり、世界的にも広く使われている。しかし、未同定の妨害物質が存在する可能性も指摘されていた。そこで、妨害物質の影響を除去する方法を確立し自動分析法に用いた。この新しい自動分析法について基礎実験を行った結果、海水中の13pM程度の鉄(II)を現場で測定することが可能となった。また、観測現場で鉄(II)をキャリブレーションできるシステムを開発した。このシステムにより、観測中に50-100pMレベルの鉄(II)について検量線を作成することに成功した。 これらのジステムを現場型自動分析計に導入し、白鳳丸KH-11-10次研究航海の観測に適用した。その結果、東部南太平洋における表層海水中のpMレベルの鉄(II)の分布が明らかとなった。さらに、同じ観測点で日射の異なる時間帯に観測を行ったところ、夜間の鉄(II)濃度は検出限界以下であったが、太陽光の下では表層でpMレベルの鉄(II)が検出された。現場分析計を用いることにより、光還元による鉄(II)の生成過程を明らかにすることが可能となった。
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