研究課題/領域番号 |
21310008
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研究機関 | 東京農工大学 |
研究代表者 |
楊 宗興 東京農工大学, 大学院・農学研究院, 教授 (50260526)
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研究分担者 |
渡邉 泉 東京農工大学, 大学院・農学研究院, 准教授 (30302912)
木庭 啓介 東京農工大学, 大学院・農学研究院, 准教授 (90311745)
妹尾 啓史 東京大学, 農学生命科学研究科, 教授 (40206652)
大塚 重人 東京大学, 農学生命科学研究科, 准教授 (10313074)
横尾 頼子 同志社大学, 理工学部, 講師 (00334045)
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キーワード | 酸性化 / 陸域生態系 / 亜熱帯 / 中国 / 窒素 / 微生物相 / 水生昆虫 / 重金属 |
研究概要 |
アジア型の酸性化によるこれまで知られていない生物影響を明らかにするため、本年度は大気沈着負荷の少ないコントロール地域として中国海南省の森林集水域を新たに選定し、現地調査を行った。前年までの、著しく酸性化した森林集水域を含むいくつかの地域の試料とともに、渓流水水質、土壌化学性、植物、土壌動物、水生昆虫等の化学分析を行い、生物調査の結果を合わせて、酸性化影響について考察を行った。 その結果、最も酸性化が著しい地域(Dinghushan)では、酸性化により土壌中の化学成分が大幅に変化し、その結果として、生物に成長阻害やバイオマスの減少、多様性の減少などの影響が発現している可能性が示唆された。 DHSでは、塩基性カチオンの濃度が低く、AlやMnといった重金属類の濃度が高かった。土壌水や土壌交換サイトでAlが卓越し、他元素の生物利用性が低下している状況にあった。DHSの植物は、可視障害は見られなかったものの、Al濃度やCu濃度の高さ、またCa/Alの低さは、成長阻害が生じておかしくないレベルであった。酸性度の異なる森林を比較した結果、酸性度の上昇に従って生物体Al濃度が上昇する植物種も見出されたことから、一部の植物には少なくとも近い将来に成長阻害が生ずる可能性が示された。土壌動物は、酸性化の著しいDHSにおいて、生息密度ならびに多様性指数が他の森林より大幅に低いことが判明した。今後の酸性度の上昇に伴って、土壌動物のバイオマスや多様性はさらに減少する可能性が高い。一方、渓流の水生昆虫は、カゲロウ目とトビケラ目はpHが高い地域の渓流で多量に採取されたのに対し、pHが低いDHSの渓流では、全く採取されなかった。カゲロウ目とトビケラ目の体内Al濃度はコントロール地域でも他種より一桁高く、Al取り込みに対する防御が弱いために、酸性化したDHSでは消滅した状況に至ったいると解釈される。
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