研究分担者 |
長尾 誠也 金沢大学, 環日本海域環境研究センター, 教授 (20343014)
川東 正幸 首都大学東京, 都市環境科学研究科, 准教授 (60297794)
杉山 裕子 兵庫県立大学, 環境人間学部, 准教授 (40305694)
高橋 勝利 独立行政法人産業技術総合研究所, 計測フロンティア研究部門, 主任研究員 (00271792)
廣田 充 筑波大学, 生命環境科学研究科, 准教授 (90391151)
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研究概要 |
本研究は土壌-陸水系における炭素動態の鍵となる溶存有機物(DOM)を,極性の異なる3成分(非フミン物質,弱疎水性フミン物質,強疎水性フミン物質)に分別する手法を開発し,フィールドモニタリングへの応用例を示すことで新しい動態解析法を提案することを目的としている。本年度(平成23年度〉はこれまでの2年間で得られた3成分分別法を発展させ,ルーティン化を達成した。すなわち,C18カラム法とDAX8バッチ法を逐次に行うことで,バラツキや測定誤差を加味したより正確かつ簡便なDOM3成分分別定量法の開発を達成した。具体的には採取土壌100g程度を用いて得た水抽出DOMを中性条件でC18カラムに通じ,この通過液をDAX8バッチ法に供し,それぞれのTOC濃度測定を行うことで,5連のデータ測定が可能となり,フィールド調査でも十分に実用可能であることを明らかにした。また,この手法の有用性を示すために3地点(TSY,TSN,GSH)の黒ボク土と1地点の火山灰性未熟土(OS)に適用したところ,サイトおよび層位間で3画分の組成割合に違いが見られた。TSYやTSNでは下層ほど非フミン物質の占める割合が大きく、2A層では強疎水性フミン物質が疎水性画分の大部分を占めた。また、GSHでは層位間での非フミン物質割合の変動が少なく、50-60%程度にとどまり、Bs1層では他層位と比べて非フミン物質割合が高い値を示した。OSではGSHと同様に非フミン物質割合の変動が層位間ではあまり見られず、強疎水性フミン物質の占める割合は概ね低い値を示した。これらの結果から、この定量法が新たな土壌生態系における炭素動態の解析に極めて有用な情報をもたらすことを実証できた。今後、本定量法を土壌のみならず河川や湖水等に対しても適用できれば、陸域生態系全体のDOMの動態把握が期待できることが結論づけられた。
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