研究課題
黒潮流軸方向の栄養塩輸送について、気象庁の長期観測データを用いて、東シナ海のPN断面における栄養塩輸送量の空間構造と時間変動に関する解析を行った。この結果、黒潮流域では深度400mを中心とする領域に最大の栄養塩輸送量が存在することや、黒潮流速および流動構造の変化は、黒潮の栄養塩輸送量の時間変動の主な要因であることを明らかにした。また、黒潮中層および底層の栄養塩濃度は2004年以後に顕著に上昇したことも示した。一方で、黒潮起源の栄養塩が東シナ海の大陸棚上へ進入するメカニズムを数値トレーサー実験によって明らかにした。結果は次の通りである。黒潮中層水は東シナ海大陸棚端の100mと200m等深線の間に常に存在し、底層の高い栄養塩濃度を維持している。この黒潮中層水は主に春から夏にかけて東シナ海の大陸棚上に進入する。この進入を支配しているのは台湾海峡流量に比例する台湾北部の表層流である。台湾北部表層での流れが春から夏にかけて強くなると、その底層に形成されるBottom Ekman流により、100mと200m等深線の間に存在する黒潮中層水が東シナ海の大陸棚上に運ばれることになる。また、この進入過程は長江の流量変化に影響されないことが確認された。これらの他に、瀬戸内海では、急潮に伴う外洋水の進入について、豊後水道で集中観測を行った。
2: おおむね順調に進展している
現場観測データの取得に想定よりも多くの時間を割いたため、瀬戸内海を対象とする低次生態系モデルの構築はやや遅れているが、計画遂行に大きな影響はない。
当初の計画通りに研究を進めると同時に、黒潮流域での栄養塩輸送やその豊後水道への進入過程に重点を置く。また、低次生態系モデルの改良を継続する。
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