研究課題
東シナ海の低次生態系における栄養塩の役割を明らかにするために、東シナ海における栄養塩総量と植物プランクトン総量に対する起源の異なる栄養塩の寄与を、栄養塩濃度と基礎生産の季節変化を概ね再現できる数値生態系モデルを用いて定量的に評価した。栄養塩起源として、黒潮、台湾暖流、河川(主に長江)、大気降下物、海底堆積物を考えた。モデル結果によると、黒潮流域からの栄養塩供給は、東シナ海の栄養塩総量の6割、植物プランクトン総量の7割を占める一方で、台湾暖流、河川、海底堆積物が供給する栄養塩は、いずれも東シナ海の栄養塩総量と植物プランクトン総量の約1割を占めた。大気からの栄養塩供給の影響は、東シナ海の栄養塩総量と植物プランクトン総量の5%以下にとどまった。この結果は東シナ海の栄養塩および植物プランクトン総量に対して、黒潮や台湾暖流を起源とする外洋性栄養塩が重要であることを示す。また、黒潮流軸方向の栄養塩輸送について、昨年度に解析した東シナ海から日本南岸に拡張して、黒潮による栄養塩輸送の空間変化を解析した。解析結果より、日本南岸における栄養塩輸送量の2割は東シナ海の黒潮から、3割は琉球海流から、5割は黒潮再循環から流入してくることが分かった。この他に、豊後水道における栄養塩の季節変化と経年変化について、外洋起源と内海起源の栄養塩の寄与率を評価した。また、外洋起源栄養塩の豊後水道への流入メカニズムとして、河川から内海に流入する淡水供給によって励起される豊後水道における河口循環流の可能性を新たに提起した。また、東シナ海の低次生態系モデルについて、堆積物からの栄養塩フラックスの定量化に改善すべき点を見つけた。
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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